四季おりおりの山海の食べ物を、風味を損なわずに長期にわたって保存し、好きな時に取り出して食べる。かつては夢物語だったこの行為を初めて実現したのが缶詰という技術でした。現在では缶は食品や飲料用の容器として広く利用されており、「食品缶詰」や「飲料缶」として日々の私たちの生活の中にしばしば登場します。
■ 缶詰となるためには次のような厳しい諸条件をクリアしなければなりません。
これらの厳しい条件をクリアするためには、多くの人々の努力と、スチール材やアルミ材を供給している素材メーカーと製缶業者との密接な協力関係が必要となります。
ここでは代表的な「缶」の製造過程をいくつかご紹介します。 次にお店で缶詰を手に取った時に、今までとはちょっと違う面白さが生まれてくるかもしれません。
3ピース缶は、蓋・胴・底の3つのパーツが組合わせられて構成されています。胴の接合方法によってハンダ缶(ハンダ接合)、接着缶(ナイロン等の接着剤接合)、溶接缶(溶接による接合)に分かれますが、現在は溶接缶が主流となっています。3ピース缶は強度がありレトルト(圧力をかけながらの高温殺菌)という強い殺菌処理に耐えられる構造のため、食料品やミルク入りコーヒー飲料、紅茶飲料など、さまざまな内容物に適用できる汎用性の高い容器です。
2ピース缶は、蓋と胴の2つのパーツが組み合わされて構成されています。食料用2ピース缶には従来の打抜き缶(オーバル缶・角缶)とDR缶(Draw&Redraw Can)があります。打抜き缶は小規模設備で小回りが利くため、主に缶の高さを必要としないいわしやさんまなどの小さな魚の缶詰に使用されます。一方のDR缶は、まぐろなどの多少大き目の魚の缶詰として利用され、皆様の目に触れる機会も多いものとなっています。
2ピース缶は、蓋と胴の2つのパーツが組み合わされて構成されています。一般的に多く見かけるものはコーラなどの清涼飲料水やビールに使用されているDI法(Draw&Ironing Method)といわれる深絞り製法で作られたアルミ缶です(一部スチール製のものもあります)。この製缶方法は、大規模設備で高速度で生産することが可能です。ただしDI缶は構造上軟らかいため、強度を必要とする内容物には使用しにくいなど、用途を限定される場合があります。
2ピース缶は、蓋と胴の2つのパーツが組み合わされて構成されています。DI缶(Draw&Ironing Can)の長所である高い生産性を生かし、さらに強度面をカバーして、環境保全性を飛躍的に高めたスチール缶が、東洋製罐によって開発されたTULC(Toyo Ultimate Can)です。TULCには、炭酸飲料向けのものと高温殺菌向けのものの2種類の缶があり、皆さんが店頭で見かけるあの「底が白い缶」です。生産時に水を全く使用しないことも大きな特徴です。
ボトル缶は、その名のとおりボトル(ビン)の形をしており、従来ビンに使用されているスクリュー式のキャップで蓋をした缶です。金属缶本来の長所である内容物保護性に、一度開けた後でも再び蓋ができるリシール性と持ち運びの利便性を加えるものとして大和製罐が開発しました。ボトル缶には、蓋・胴の2つのパーツが組合わせられて構成されてた2ピース型と、蓋・胴・底の3つのパーツが組合わせられて構成された3ピース型があります。
日本では1965年4月にビール缶のアルミのプルトップが初めて登場しました。それまでは炭酸飲料やビールには高い内圧に耐えるため硬いブリキを使用しており、付属の缶切りで開けると中身が噴き出すなどの問題が生じていました。次に登場したイージーオープンエンドはビール缶のほか炭酸飲料用の缶にも使用されました。その後トマトジュースなどの塩分を含んだ内容物に対しても耐食性の高いアルミ蓋が登場し、ほぼ全ての飲料でアルミイージーオープン蓋が採用され簡便性が向上しました。